「筋膜はがし」って言葉を最近よく聞きます。確かにこれは指で筋膜をはがしているようにもみえるし、「肩甲骨はがし」なるものもなんとなく身体から肩甲骨を「はがし」ているようにもみえます。
しかし筋膜(英語でいうFascia)ははがせるものではありません。皮膚から骨まで、組織は何層かに分かれていますが、各々が折り込まれた繊維のように繋がっていますし、各層自体もこの折り込まれた繊維のような構造をしています。
こうした筋膜同士は互いに「滑走する」と言われていましたが、これも滑走するわけではなく、互いに全体として動くというような感じです。
ですから私たちは筋膜をはがすというよりは、全体として動きが失われているところを、様々な手技を使いながら動きを回復させるように施術します。
また動きの悪い箇所=痛い箇所ではないことも多くあります。痛い箇所はむしろ動きが多すぎて、結果炎症を起こしている可能性もあります。
筋膜組織には脳や脊髄を覆っている膜組織も含まれます。クレニオセイクラルセラピーではこのような膜組織(髄膜)も扱います。このセラピーではできる限り優しい力を使います。この髄膜は骨の内側にありますので強い力ではないと作用しないように思えますが、優しい力を使って動きの悪い箇所にその力を作用させる方がより効果的に施術できます。
また髄膜の奥には脳脊髄液などの液体が循環していますので、その水力学も治療に使えますので、さほど強い力を使う必要はないのです。
世間により広く知らせるためには「はがす」などの分かりやすい言葉を使いたいのだと思います。しかし施術者として、特に初学者の先生がこの言葉に囚われてしまうと組織の捉え方が非常に狭くなってしまいがちです。自戒でもあるのですが、やはり机上の勉強もしっかりやって自分で考えて人の身体というものを捉えないといけないなと思いました。
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